SS 「おかえりなさい」

ご訪問ありがとうございます!

昨日はLaLaコミックス9巻の発売日!
……実は昨日買いに行けませんでした……!
買いに行く気満々だったんですけどね~、下の子が体調崩して学校休んだんですよ(汗)
病院連れて行ったり、その上、上の子の家庭訪問もあったりして、結局買いに行けず(涙)

今日はなんとしても買いに行きたい!と思ってます♪

SS「おかえりなさい」久し振りの夫婦期間です~♪
続きからどうぞ!



おかえりなさい                 夫婦期間
 
「じゃあ、行ってくる。……夜、ちゃんと戸締りしろよ。飯もちゃんと食えよ。それから、」
「もお~、大丈夫だよ!子供じゃないんだから」
注意事項を更に並べ立てようとした堂上を郁が遮った。
 
二人の住まいである官舎の玄関先でのやり取りだった。
堂上は結婚後、初めて宿泊を伴う出張に出掛ける所だった。
と、いっても今回は一泊なので、明日の夜には帰って来られる予定だ。
 
堂上はまだ心配そうな顔をしつつも、なんとかそれ以上言い募るのを我慢した。
「それに、たった一泊だし!」
「ああ。…そうだな。じゃあ、まあ気を付けてな」
「篤さんこそ、気を付けてね!いってらっしゃい!!」
 
堂上は郁を引き寄せ、軽く口づけた。
「行ってきます」
 
堂上を送り出した後、郁は自らも出勤する用意をする為に慌ただしく動き出した。
 
 
「ただいま」
夕方、誰もいない部屋に帰って来た郁が、小さな声を出す。
 
……。
部屋に入って、電気を点け、ぺたんと座り込む。
堂上より郁の方が早く帰って来る事なんて、別に珍しくもなんともない。
その時と同じ筈なのに、今日はなんで、こんな気持ちになるんだろう……。
 
なんだか、よそよそしく、他人の家に勝手に入り込んだみたいな居心地の悪さだ。
いつもなら、慌ただしく洗濯機を回したり、晩御飯の支度をする所だが、なんにもする気が起きない。
 
結婚前、堂上が出張に出た事は何度もある。
もちろん、とても寂しい思いをしたが、今回はたった一泊だから、と郁は楽観していた。
まさか、こんなに寂しく、不安で心許ない気分になるとは予想もしていなかった。
 
今日、仕事中は平気だった。
もちろん、堂上がいない事が何日も続けば、仕事中も寂しく思う事は確実だが、会議などで堂上が席にいない事は良くあるので、一日二日位は大丈夫だ。
でも、家に帰った途端、こんなに寂しい気持ちになるなんて……。
こんな事なら、柴崎に夕飯付き合ってもらえば良かったかもしれない、郁はそう思ったが、今から外に出るのも億劫だ。
 
食欲もとんと湧かないが、もし、夕食を抜いて、それがばれたら、後で堂上に怒られる事は確実だ。
……取り敢えず、先にお風呂でも入ろう。
郁はノロノロと立ち上がった。
 
結局、自分一人の食事を作るのも面倒になり、ストックしてあったレトルトカレーを食べる事にした。
以前、二人とも帰りが遅くなった時に、堂上と二人で食べたのと同じカレーだったが、その時と味が違う様な気がする。
レトルトカレーの味が変わる筈はない。
堂上と二人で食べるのと、一人きりで食べる。
それだけで、味がこんなに違って感じるなんて……。
 
とうとう涙が溢れだしそうになったが、郁は懸命に涙を堪え、カレーを無理矢理かきこんだ。
 
使った食器を片づけると、ソファに力なく座り込んだ。
いつもならあっという間に過ぎる時間が、今日はとても長く感じる。
読みたい本も溜まっている筈なのに、読む気もおこらない。
 
……たった一日だけの事なのに、こんな事でどうすんの、しっかりしなきゃ。
郁はそうは思うものの、どうにも体が動かないし、気力も湧いてこない。
……もう、寝ちゃおうかなあ……。
 
そんな時、郁の携帯が着信を知らせた。
郁が慌てて立ち上がり、携帯を取る。
 
「もしもし、篤さん!?」
「ああ、俺だ。どうだ?変わりないか?」
「うん!大丈夫だよ!」
堂上の声を聴いて、郁はまた泣きそうになったが、出張に出ている堂上に心配など掛けたくない。
郁は殊更に明るい声で答える。
 
「今日は書庫に入ってたんだろ。大丈夫だったか?」
「うん!今日は大丈夫だったよ。篤さんの方はどう?」
「ああ、順調だ。メシ食って、今部屋に帰って来た所だ。この分なら、明日も予定通り帰れそうだ」
「良かった!」
「お前はちゃんとメシ食ったか?」
「うん、食べたよ」
「何食ったんだ?」
「う……。え~と、レトルトカレー」
怒られるかと思ったが、堂上は電話の向こうで苦笑した様だった。
「まあ、ちゃんと食べたんならいい」
 
その後も他愛ない会話をし、15分程話して、電話を切った。
 
郁は眠る為に寝室へと入った。
いつも二人で眠るベッドに、一人で横たわる。
再び、寂寥感が郁を襲う。
堂上と話せた事で、浮上していた気持ちが沈みそうになったが、郁は眠る為に無理矢理目を閉じた。
 
 
翌日、仕事から帰った郁は昨日とは打って変わって、バタバタと動き回っていた。
もうすぐ、堂上が帰って来る。
慌ただしく、夕食の準備やお風呂の用意などをする。
 
夕食の準備も終わり、もう、後は仕上げだけ、という段階になった頃、玄関の鍵を開ける音がした。
郁は玄関に飛んで行く。
 
「ただいま」
堂上が笑みを浮かべて言った。
 
堂上の顔を見た途端、急に涙が溢れそうになって、郁は焦った。
「郁?」
黙って立ち尽くしている郁に、堂上が問い掛けた。
 
おかえりなさい、そう言いたいけれど、喉が詰まって声が出ない。
無理に声を出そうとすれば、絶対に涙声になってしまう。
 
郁は何も言わず、堂上に抱きついて行った。
堂上は一瞬驚いた様だったが、持っていたカバンをそのままストンと床に落とすと、郁を受け止めた。
 
何も言わずに抱きついてきた郁を力強く抱き締めて、堂上は言った。
 
「……俺も寂しかった」
 
その言葉を聴いて、郁の瞳は決壊した。
涙がポロポロと零れる。
堂上に抱き締められ、そのぬくもりを感じ、郁は心が温かいもので満たされていくのを感じた。
 
まだ少し涙が残っていたが、郁は漸く声を出した。
「篤さん、おかえりなさい」
やっと見られた郁の笑顔に、堂上も優しく笑う。
「ただいま、郁」
 
堂上は郁の頬に残っていた涙を指で拭ってから、口づけた。
 
 
 
 
  1. 2012/05/03(木) 07:00:00|
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