SS 「闇鍋と散歩」 前編

ご訪問ありがとうございます!

暖かくなったり、寒くなったり、まさに三寒四温ですね。
季節の変わり目に体調崩す事が多いので、気を付けたいと思います。
みなさまもどうぞお気をつけ下さいね。

今日のSSは一周年記念リクエスト第八弾です!
(いつまで一周年記念やってんだ!?って言わないで~)
かっちゃんさまより、リクエストして頂きました。

「闇鍋と散歩」です。上官・部下期間です。
前編になります。

続きからどうぞ!


闇鍋と散歩                    上官・部下
 
「今日の夜は鍋するぞ!」
突然大声で宣言したのは進藤だ。
 
進藤がそう宣言したのは奥多摩の宿舎で昼食中の事だ。
今回、奥多摩訓練に参加しているのは進藤班と堂上班と芳賀班だった。
通常は二班ずつの奥多摩訓練だが、今回はスケジュールの関係で三班での参加となっている。
期間はいつも通り、二週間の予定だ。
現在一週間が過ぎ、今日は休養日に充てられている。
今日は食事の支度をしてくれるおばちゃんも休みだった。
だが、いつも前日に三食分の用意をしていってくれる筈で、実際今日の朝食も昼食も昨日の内におばちゃんが用意してくれていたものだった。
 
「なんですか、唐突に。夕食も用意してくれてあるんじゃないんですか?」
多少苦々しい表情で進藤に問いかけたのは堂上だ。
 
「夜の分は用意しなくていいと言っといた」
「また勝手な事を……!」
堂上がやや小声で呟く。
 
「で、何の鍋するんですか?」
堂上とは対照的に郁はワクワクした様な表情で、身を乗り出して尋ねた。
 
進藤がニヤリと笑ってから答えた。
「闇鍋だ!」
 
「闇鍋~!?」
郁が声を上げる。
 
「各自夜までに一つ食材を用意する事!条件は食べられる物だ。間違えても靴下とか入れんじゃねえぞ~」
「ちょっと待って下さい!何で闇鍋なんですか?別に普通に鍋すればいいでしょう!?」
「気分だ!」
 
食ってかかった堂上に、進藤が明快に一言で答えた。
気分だ、って……。アンタは玄田隊長か!
と、全員が心の中で突っ込んだ。
 
だが、このメンバーの中には進藤を止められる者はいない。
堂上も諦めて深い溜息を吐いた。
「六時に集合な~」
進藤は楽しそうにそう言うと、食堂を出て行った。
 
「食べられる物ならなんでもいいんですか?」
郁は楽しそうだ。
「まあ、一応そうだけど」
小牧が苦笑しながら答える。
「お前、あんまり変な物持ってくんなよ。誰が食べる事になるかわからないんだからな」
堂上が郁に釘を刺す。
 
「あ、そうか。自分が食べる事になるかもしれないんですね!」
「そういう事だ」
「鍋の味自体が変わるものも避けた方がいいと思うよ。前に一回酷い味の時あったよな」
小牧が郁にアドバイスをし、後半は堂上の方を向いた。
「ああ、あったな。……あれは酷かった」
堂上がげんなりした顔で頷く。
 
基本的に鍋を残す事は許されない。
みんな涙目で吐きそうになりながら、どうにかこうにか食べきった。
それに懲りたのか、それ以来、特殊部隊内で闇鍋が開催されたという話は聞いていない。
 
「ど、どんな味だったんですか?」
「どんな、って言われてもな……。言葉ではとても形容し難い、酷い味だった」
堂上が顔を顰める。
「聞いた話によると、入れられたのは醤油、カレールー、キムチ、ウスターソース、納豆、マヨネーズだったかなあ。そんで、そこに通常は鍋には入れられないだろう具材が入ってて……」
小牧が思い出しながら補足した。
 
聞いていた郁と手塚の顔が引き攣る。
それらが混じった鍋なんかとても食べたくない。
確かに堂上が言う通り、とても形容し難い味になりそうな事は想像がつく。
 
まともな食材を選ぼう。
郁と手塚は心に誓った。
 
そして、六時になり、闇鍋大会が始まった。
どうやら、準備は全て進藤が仕切ったらしい。
 
部屋の隅に用意された大きな鍋。
その鍋には出し汁が入っており、そこに各々が用意した食材を入れていくらしい。
 
順番に呼ばれた者から鍋の方に行き、自分が用意した食材を入れていく。
どんな食材が入れられているのかこの段階では分からない。
 
郁が用意したのは果汁の入っているグミだった。
自分のおやつ用に持ち込んでいた物だ。
 
郁の番になり、鍋の方に行く。
郁は入れる時に他にどんな物が鍋に入っているか確認しようと思っていた。
「蓋を取ったら、一瞬で入れて、すぐに蓋を閉めろよ~!」
進行役として鍋の傍に陣取っている進藤が郁に注意する。
「え~?何で中見ちゃ駄目なんですか?」
「何で、って。今中身見たら後の楽しみが減るじゃねえか」
「楽しみ、って……。恐怖の間違いじゃ」
「ん?何か言ったか?」
「いえっ。何でも」
郁は諦めて、大人しく持って来たグミを鍋の中に入れた。すぐに蓋を閉めたので、鍋の中身がどんな風になっているのか、窺い知る事は出来なかった。
 
そして、全員が鍋に入れ終わった所で、中央に鍋が運ばれてきた。
「よ~し、蓋取るぞ~」
進藤が楽しそうに言うと、蓋を開けた。
 
みんなが一斉に鍋を覗き込む。
誰かが醤油をいれたのか、汁の色は醤油が入っている様な色をしている。
そして、浮かんでいる食材は、通常鍋に入っているだろう、白菜や肉類などは確認出来たが、一目見ただけでは何なのか判断出来ない様な物も多かった。
大きな鍋だ。
今、目で確認出来ない鍋の底の方にも、得体のしれない物がまだ潜んでいる可能性もある。
 
「よ~し、じゃあ、一巡目行くぞ~!」
進藤がそう言うと、用意してあった取り皿に手早く鍋の中身を取り分けて行く。
あっと言う間に各自に取り皿が行き渡った。
 
各自の取り皿に何が入っているか、それはもう運次第である。
「久し振りの闇鍋に乾杯!!」
あちこちで缶ビールをぶつけ合う。
郁はアルコール濃度の低い、缶のカクテルだった。
 
そして、皆が闇鍋に手をつける。
たちまち、あちらこちらで声が上がる。
「何だ、案外大丈夫じゃないか」
「うわっ、これ何だ!?」
「ま、まずい!」
「お、意外とうまい」
 
郁もおそるおそる、食べ出す。
まずは一口、スープ、というか汁を飲んでみる。
……微妙。
一言で言うとそうなる。
見た目通り、醤油の味がしているし、そんなにひどい味ではない。
前回の闇鍋で懲りた者が多かったのか、鍋全体の味を変える様な物はあまり入れられなかった様だ。
ただ、美味しいのか、と聞かれれば決して美味しいとは言えない。
 
まずは無難に豚肉を食べてみる。
まあ、大丈夫。
そして、次に箸で掴んだのは……。
どろどろに溶けかけていて、なんだかよく分からない。
「これ、何だろ?」
怪訝そうに首を捻った郁に堂上が答えた。
「多分、バナナだ」
「バナナ!?」
「ああ。俺もさっき食った」
堂上がげんなりした顔になる。
「……どうでした?」
「……食ってみろ」
 
郁は思い切ってバナナらしき物体を口に放り込んだ。
それは確かにバナナだった。
……マズイ。
バナナは普通に好きだが、これは……。
「……マズイです」
「だろうな」
堂上が苦笑する。
 
見ると、堂上の取り皿はもう半分以上減っている。
「まあ、前の鍋に比べたら随分マシだ。頑張って食え」
「はい……」
 
郁は頑張って食べ始める。
白菜やきのこも入っていて、それはまあ大丈夫だった。
リンゴも入っていて、それもかなり不味かった。
郁が入れたグミも入っていて、それも大概不味かったので、あまり文句を言えた義理ではない。
 
郁は漸く、なんとか自分の取り皿の分を食べ切った。
み、水……!
ふと見ると、水の入ったグラスが目に入った。
郁はその反射的にそのグラスを手に取ると、ゴクゴクと飲んだ。
大きく三口ぐらい飲んだ所で気が付く。
え?これ水じゃない!?
 
「お前、それっ!」
堂上が郁からグラスをひったくった。
 
「み、水だと思って……」
「アホウ!これは日本酒だ!」
缶ビールを飲み干した堂上が用意した日本酒だったらしい。
「す、すいません。お酒減らしちゃって……」
「そんな事は構わんが……。お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ~。ほんのちょっとだし」
「本当か……?」
郁の酒の弱さは折り紙つきだ。堂上が疑わしげに郁を見る。
 



後編へ続く
  1. 2012/03/10(土) 07:00:00|
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