SS 「口実」

ご訪問ありがとうございます!

SSアップするの随分久し振りな様な気がします……。
でも、これから年末年始もあるし、春位までは結構バタバタしそうかなあ(涙)
(長男が小6で、卒業&中学入学なので)
今迄よりもSSアップが遅くなるかもしれません……(汗)
でも書きたい気持ちはまだまだあるので!
ひょっとしたら頻度は落ちるかもですが、頑張ります♪

今日は一周年記念のリクエスト第三弾です!
ゆんゆんさまよりのリクエストです。

「口実」です。期間は上官・部下プラス恋人です。
上官・部下の時期は県展ちょい前位のイメージで書きました。
続きからどうぞ!




口実                        上官・部下
 
堂上と郁は市街哨戒に出ていた。
「ああ!なんかやってますよ、教官!」
郁が瞳を輝かせながら言った。
やけに人通りが多いな、と思ったらすぐ先の大きな公園で何かイベントが行われている様だった。
「そうみたいだな」
そう言っている内に公園の中が覗ける辺りまで来た。
どうやら、フリーマーケットが行われている様だ。
「うわあ、いっぱい、お店出てますね!」
郁の瞳はキラキラと輝き、全身から覗いてみたい!というオーラが滲み出ていた。
堂上は思わず吹き出しそうになる。
「ホントに分かり易い奴だな、お前は」
 
アホか、貴様!仕事中だ!!
と、普段なら怒鳴る所だが、郁の表情を見るとつい覗かせてやりたい、という気持ちに堂上は傾いた。それに時間を確認してみると、そろそろ昼休憩を取ってもおかしくない時間だった。
 
「食べるものもありそうだし、昼休憩に入る事にして、ちょっと覗くか?」
「ホントですか!?」
郁が嬉しそうに勢いよく言った。
陰で犬に例えられる事の多い郁だが、確かにぶんぶんと振る尻尾が見えそうだ。
堂上は笑いを堪えて頷いた。
 
「ああ、でもあたし財布持って来ていません……!」
郁が一転、悲愴な顔になり、項垂れる。
「俺は財布持って来てるから大丈夫だ」
「じゃあ、貸して下さい!後でちゃんと返しますから!」
「ああ」
別に返して貰うつもりはないが、そう言っておいた方が郁が遠慮なく買い物出来るだろう、と堂上は頷いた。
 
そして、堂上と郁は公園に入って行った。
かなり、沢山の店が出店していた。
食べ物関係も多かったし、手作りの小物や服を出している店もあったし、既製品のリサイクル品を出している店もある。
 
ゆっくり全部見ていたらとても休憩の時間内に見る事は出来なさそうだ。
「教官、なんか見たいもの、ありますか?」
「いや、俺は特にない。この人ごみだ。後で落ち合うのも大変そうだし、お前に付き合うから、お前の好きな所回れ」
「はい、ありがとうございます!」
郁は嬉しそうに頷いた。
 
郁は手作りの小物を置いてある店を中心に見て回った。
何点か可愛いなあ、と思うものがあった。
ひとつは堂上にお金を借りて買った。
可愛らしいポーチだ。
もうひとつ、すごく気に入ったものがあったのだが、少し価格が高めだったので、かなり逡巡したが諦めた。
 
堂上が時計を確認しながら口を開いた。
「笠原、そろそろなんか食わないと休憩時間が終わってしまうぞ」
「わ!もうそんな時間ですか!?すいません、つい夢中になっちゃって」
堂上に言われ、自分も時間を確認した郁が慌てて申し訳なさそうに言う。
 
そして、食べ物関係の店が集まっているゾーンへと向かった。
食べ物関係の店もかなりの数があり、郁はあれこれ目移りしながら、何を食べるか真剣な顔で吟味している。
堂上はそんな郁を見て、また密かに笑いを堪える。
食べ物を扱っている店が並んでいる列の奥に長椅子が沢山置かれていて、購入したものをそこで食べる事が出来る様になっていた。
堂上と郁は食べたいものをいくつか購入しながら、長椅子へと向かった。
結構な数の人々が座って飲食をしていたが、何個か開いている長椅子があったので堂上と郁も座る事が出来そうだ。
 
「飲み物買ってくる。何がいい?」
堂上が自分の買った食べ物を郁の隣に置きながら言った。
「あ、すいません。じゃあ、お茶をお願いします」
「わかった」
 
堂上が飲み物を買いに行ってくれている間、郁はさっき購入したポーチを取り出し、検分していた。
今使っている化粧ポーチが大分古くなり、ファスナーの開閉もスムーズにいかなくなってきていたので、丁度新しい物が欲しいなあ、と思っていた所だった。
大きさもピッタリだし、柄も可愛い。
郁はニコニコしながら、ポーチをまた仕舞った。
 
「ほら。先に食ってれば良かったのに」
戻ってきた堂上が郁にお茶を渡し、自分も郁の隣に座った。
「ありがとうございます。買いに行ってもらってるのに、先に食べるなんて出来ません!」
 
堂上が買って来てくれたお茶を飲みながら、二人並んで食事を始める。
「あ、美味しい~!」
郁が食べているのはおにぎりだ。
小さい可愛らしいおにぎりが何個かセットになっていた物だ。
見た目があんまり可愛らしいので、ついつい惹かれて購入したのだが、味もなかなかのものだった。
 
郁が買ったのはそのおにぎりのセットとベーグルサンド。
堂上も郁が買ったものと中身は違うがベーグルサンドとおにぎりを購入していた。
休憩時間が限られているので、のんびりと食べる、とまではいかなかったが、おにぎりもベーグルサンドもとても美味しかった。
そして、堂上とフリーマーケットを見て歩けた事も、郁にとって、とても楽しくて、嬉しい印象深い出来事になった。
嬉しそうにしている郁を見て、堂上の口元も自然と綻んでいた。
 
 
***
 
それから、時は流れ、堂上が退院してから何度目かのデートの時だった。
堂上がなにやら、ポケットから紙袋を取り出し、郁に渡した。
「何ですか?」
郁が首を傾げる。
「開けてみろ」
郁が袋を開け、中身を取り出す。
中に入っていたのは、布で出来た小さくて可愛らしいテディベアだった。
「うわあ!可愛い~!!」
思わず叫んだ郁だったが、すぐに首を捻る。
あれ、でもこのテディベア、見た事ある。何で?デジャヴ?
 
不思議そうに首を捻っている郁を見て、堂上が笑う。
「もう随分前になるが、市街哨戒の休憩中にフリーマーケットに立ち寄った事があっただろう。覚えてないか?」
「ああ!覚えてます!!そうだ、このベア、あの時の……!!」
郁が叫んだ。
 
そう、あの時、郁が気に入ったものの、少し価格が高かったのと、堂上にお金を借りるのも申し訳ないと思ったので、諦めたテディベアだった。
部屋に飾ったら、「熊殺しのあんたがテディベアねえ~」と柴崎に笑われるのじゃあるまいか、という懸念も諦めた理由の一つだが。
 
「どうして、教官が……?」
「お前、あの時ずっとコレ見て悩んでたろ?だから飲み物買いに行った時、つい買ってしまったんだが……。渡す理由が見つけられなくてな。仕舞い込んだままになってた」
堂上が苦笑しながら郁に告げる。
 
そう、あの時はまだ郁に対する思いも必死に箱に閉じ込め、認めようとはしていなかった頃だ。
だが、その人形をキラキラした瞳で眺め、でも諦めて名残惜しそうに店を立ち去る郁を見ていて、どうしても買ってやりたくなった。
その衝動を抑えられず、飲み物を買いに行った時に思わず買ってしまったが、渡す口実がない事に買ってから気がついた。
 
決してそんなに高額なものではない。確か二千円前後だった様に思う。
だが、ただの上官がなんの理由もなく渡すには少し高い様な気がした。
おそらく郁が購入するのを諦めたのも価格が少し高いのが理由の一つだっただろう。
そう考えると、渡せなくなった。
何も考えずに飲み物を渡す時に一緒に渡してしまえば良かったのだろうが、そのタイミングを堂上は失った。
そして、テディベアは堂上の部屋の引き出しに袋に入ったまま、仕舞われる事になった。
 
郁は大事そうに両手で包むように持っているテディベアを見つめる。
あの時の郁は、堂上に対する気持ちがなんなのか、はっきりと自覚するまでには至っていなかった。
でも、意識していたのは確実で、堂上と一緒にフリーマーケットを見て回って、食事も一緒に食べた事はとても嬉しかったし、いい思い出になっている。
あの時、郁が欲しい、と思い、でも諦めたこのテディベア。
まさか堂上がその様子を見ていて、こっそり買ってくれていたなんて……!
郁には思いも寄らない事だったが、胸が熱くなる程嬉しい。
 
袋に入れられたままだったとはいえ、ずっと堂上の部屋に居たのだと思うとより一層、愛おしさが込み上げる。
郁はキュ、と両手に軽く力を込めて、テディベアを包み込む。
「すごく、嬉しいです。大切にします!!」
 
「ああ。……渡す口実がいらなくなって、良かった」
堂上が柔らかく微笑んだ。
 
 
 



ゆんゆんさまからはいくつか頂いたのですが、その中から「フリマ」をテーマに書かせて頂きました!
でも実は私もちゃんとしたフリマって行った事ありません。
基本、面倒くさがりなので、あんまり外出しません(笑)
なので、かなりの部分想像というか妄想です。……と言っても、全部のSSが妄想な訳ですが(笑)

ゆんゆんさま、リクエストして頂いてありがとうございました!!
楽しく書かせて頂きました。




  1. 2011/11/26(土) 07:00:00|
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