SS 「喧嘩の後」

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SS「喧嘩の後」です。夫婦期間です。
なんてことない話ですが。

続きからどうぞ!



喧嘩の後                   夫婦期間
 
気が付くと、郁は公園に立っていた。
結婚前、デートの帰りによく立ち寄った公園だ。
無意識の内にここまで走って来ていた。
 
「もう、篤さんなんて知らない!!」
そう叫んで、家を走り出た。
 
郁は力なく、ベンチ迄歩くと、一人、ベンチに座った。
いつも、堂上と並んで腰かけていたベンチに。
時刻は夕方。薄闇が包み始めた公園には人影もない。
 
一体、何が原因だったんだろう。
今日、公休だった二人は夕食の準備をしようと二人でキッチンに立っていた。
今思い返してみても、何が喧嘩の発端だったのか思い出せない。
些細な事だったのは確かだ。
それが、お互いヒートアップして、子供じみた言い争いになった。
 
結果、言い負かせられそうになった郁が、捨て台詞を吐いて、家を飛び出した。
郁は項垂れる。
別に全部が全部、自分が悪かった、とは思っていない。
郁も悪かったのは確かだが、堂上も随分とむきになっていたと思う。
 
だけど、家を飛び出す、って。しかも何も持たずに。
携帯はもちろん、財布も家の鍵すらも持っていない。全くの手ぶらだ。
あまりにも子供じみた自分の行動に嫌気がさす。
 
そして、郁の思考はどんどん転がり出す。
 
こんなんじゃ、そのうち本当に篤さんに呆れられてしまうかも……。
料理だって、篤さんの方が上手だし。
他の家事にしたって、あたしよりも篤さんの方が手際がいいし。
 
その上、こんなちょっとした口喧嘩位で怒って家を飛び出すなんて。
きっと、篤さん、呆れてるよね……。
もうお前なんか帰って来なくていい、とか言われたらどうしよう……。
 
そんな想像までしてしまい、涙が出そうになる。
俯いて考え込んでいた郁は、近づいてくる人影に気付いていなかった。
 
郁の頭にぽん、と手が乗った。
「郁」
優しく呼びかけたのはもちろん堂上だった。
顔を上げたら涙が零れ落ちそうで、郁は顔を上げられない。
 
「あ、篤さん……。ごめんなさい……」
俯いたままで涙を堪えながら郁が声を絞り出した。
 
堂上が郁の頭を軽く抱き寄せる。
「いや。俺が悪かった。むきになり過ぎた。すまん」
「でも、あたし、家を飛び出しちゃって……」
「そうだな。今度からそれは止めてくれ。心臓に悪い」
「篤さん、あたしの事、呆れてない……?」
心配そうな表情で堂上を窺う郁に、堂上が苦笑する。
「別に呆れてなんかないぞ。自分には呆れてるが」
「え?なんで?」
「むきになって、言い争って。俺の方がお前より五つも年上なのにな。俺の方こそ、その内お前に愛想を尽かされるんじゃないかと心配になる」
 
「あたしが篤さんに愛想尽かすなんて有り得ないから!逆の心配はしょっちゅうしてるけど……」
「そうか。俺がお前に愛想尽かす事も有り得ないから心配するな」
「ホント?」
「ああ。絶対ない」
「家事でもなんでも篤さんの方が手際が良くって、ちっとも役に立たない奥さんなのに?」
「お互い仕事してるんだから、家事なんてその時出来る方がしたらそれでいいんだ。俺が残業続きで家事全然出来ない事もあるだろ?それに、俺は別に家事の出来る、手際のいい奥さんが欲しくて結婚した訳じゃない。俺はお前と、お前だから結婚したかったんだ」
「篤さん……!」
郁が堂上の背中に腕を回す。
堂上も郁の頭を抱く手に力を込めた。
 
「俺の方こそお前より五つも年上なのに、すぐむきになるし、独占欲も強いし、融通もきかないしな。なのに、いいのか?」
「家で、むきになる篤さん、好きだよ。あたしの前でだけ見せるトコなのかな、って思うとちょっと嬉しいし」
今日は喧嘩に発展してしまったが、実際、むきになる堂上を見て、可愛い、と思ったりする事も多い。
 
「そうなのか?じゃ、これからも遠慮なしにむきになる事にする」
堂上が笑い、つられて郁も笑顔になる。
 
「とにかく、あたしが篤さんに愛想尽かすなんて事は絶対ないから!」
「わかった。じゃあ、お互いにその心配はしなくてもいい、って事だな」
郁が笑顔で頷く。
 
「よし、じゃあ、家に帰ろう」
「うん」
郁が笑顔で立ち上がる。
 
「ケーキでも買って帰るか?」
「え!?いいの?」
「ああ。何個でもいいぞ」
「やったー!どれにしようかな~」
 
二人並んで、手を繋いで歩き出す。
「郁、これから先も喧嘩する事があると思うが、こんな風に家を飛び出すのだけは止めてくれ。本当に心臓に悪い」
郁は首を竦める。
「ごめんなさい」
「腹が立ったら、怒ってもわめいてもいいけどな。家を飛び出すのだけは、なしにしてくれ。しかも、何にも持たずに」
 
郁はますます頭を縮こませる。
「反省してます……」
シュンと項垂れた郁の頭を堂上が軽く叩く。
「よし、じゃあ、もういい。さっさとケーキ買って家に帰ろう。鍵かけてきてないからな」
「ええっ!?」
「お前、鍵も持って出なかっただろ?もし俺と入れ違いになったら家に入れないだろう」
「そりゃそうだけど……、でも大丈夫かな?」
「まあ、敷地内の官舎だからな。大丈夫だとは思うが」
「は、早く行こう、篤さん!」
 
堂上が軽く笑う。
「どうしたの?」
「いや。それでもケーキ買うの、止めよう、って言わないんだな、と思っただけだ」
「う……。だって、もうどのケーキにしようか考えちゃったから!」
「冗談だ。さ、早く行こう」
「うん!」
 
二人は手を繋いだまま、歩みを速めた。
ついさっきまで派手な言い争いをしていた事など嘘だったかの様に、睦まじく。
 
 
 
  1. 2011/08/18(木) 07:00:00|
  2. 図書館SS
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