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SS 「不足成分」

ご訪問、ありがとうございます。

SS「不足成分」です。
夫婦期間です。郁ちゃんが教育隊の教官をやってる時のお話です。
結婚一年後位の筈だと思ってましたが、文庫の革命では「二年後」になってましたね。
ウチのSS、夫婦期間はそんなに多くないんですが、「紙婚式」は結婚一年後に郁ちゃんが教官やってる設定になってるんですよね。
一瞬、「綿婚式」に直すか?とも思いましたが(笑)そのままにしておきます。

続きからどうぞ!






不足成分                    夫婦期間
 
「ただいま」
郁が玄関のドアを開ける。
「おかえり」
キッチンの方から堂上の声がする。
「もう出来るから、手、洗ってこい」
「は~い。洗濯は?」
「明日、俺がしておく」
堂上は明日、公休だった。
 
郁が教育隊の教官を務めている今、郁の帰りが堂上より遅い事もままある。
今日もそのパターンだ。
夕食は早く帰った方が作る事になっているので、今日も堂上が作ってくれている。
 
「美味しそう!」
郁がテーブルに並べられた料理を見て歓声を上げる。
「篤さん、ごめんね、最近篤さんに作ってもらってばっかりで」
「気にするな。俺も残業が続いた時だってあった。そんな時はお前がずっと作ってくれてただろ?さあ、食べるぞ」
「うん」
郁は嬉しそうに笑うと、席に着いた。
 
お互いに今日あった話などをしながら、夕食を食べる。
堂上の作った食事はとても美味しい。
中でも、今日初めて食卓に並んだ一品を郁はいたく気に入った。
「美味しい!これ、どうやって作ったの?」
郁の問いに堂上が楽しそうに説明する。
「……結構難しそう」
自分も挑戦してみようかと思ったが、堂上の説明を聞いている内に、その意欲がシュルシュルと萎んでいく。
「気に入ったんなら、俺がまた作ってやるから」
郁の思考の流れはダダ漏れで、堂上は笑った。
 
「あ、篤さん。あたしが片付けるよ」
食後のお茶を飲み終わった後、シンクに立とうとした堂上に郁が声を掛ける。
「いや、俺がする。俺は明日休みだしな。お前は風呂入ってこい」
「でも、ご飯も作ってもらったのに」
明確に決めている訳ではないが、いつもは食事の支度をしなかった方が後片付けをする事になっている。
堂上が苦笑する。
「俺は明日休みだから、今日はいいんだ。ほら、早く入って来い」
「うん。ありがとう、篤さん」
 
郁が風呂から上がると、堂上はもう片付けを終えていた。
入れ替わりに堂上が風呂へ入った。
 
郁はソファに座りこんだ。
教官に就いてもう一か月。
色々と大変な事も多いが、大分慣れてきた。
『堂上教官』と呼ばれる事にも。
 
ふと唐突に部屋に堂上がいない事に寂しさを感じた。
そして、唐突に襲ってきたその寂寥感に郁自身も驚いた。
堂上は今風呂に入っているだけだ。
すぐにこの部屋に戻って来る。
なのに、何で……?
 
実際、それからものの数分で堂上は風呂から出てきた。
堂上が郁の横に座る。
郁は堂上の肩にもたれかかった。
堂上が郁の頭を撫でる。
「どうした?何かあったのか?」
「ううん。何にも」
 
そう、業務上も特にこれという問題は起こっていない。
ただ、ほんの少し疲れているのかもしれない。
郁は先程覚えた寂寥感を疲れているせいだろう、と考えた。
だから、ちょっと堂上に甘えたくなった。
 
「何か問題があるんだったら言えよ?」
「うん、今の所大丈夫」
 
ただ、甘えたかっただけ。
口に出すのは気恥ずかしくて言えなかったが、堂上の方で郁の気持ちは汲んでくれた様だ。
堂上は優しい顔つきで郁の頭を撫で続けてくれている。
 
そうされていると、心が満ち足りてくるのを感じた。
そして、郁は気が付いた。
ああ、そうか。別に疲れている訳じゃなかったんだ。
 
「篤さんが足りなかったんだ」
「は?」
唐突な郁の言葉に堂上が怪訝な顔になる。
「疲れてるから、寂しくなって、甘えたくなったんじゃなくて、篤さんが足りなかったんだ。ほら、いつもなら仕事中もずっと一緒なのに、今は仕事してる間は一緒に居られないから。休みもずれるし」
 
そんな事に今更ながら気が付いた。
今迄は教官を務めるのに精一杯で、そこを思う余裕もなかった。
 
「そうか。そう思える、って事は少しは余裕が出てきた、って事だな」
堂上がニヤリと笑った。
「え?」
堂上は郁を抱え上げた。
「え?あ、篤さん!?」
堂上は郁を寝室へ運ぶと、ベッドに降ろした。
 
堂上は自分も郁の隣に横たわると、郁の頭を優しく撫で始めた。
「今日の補充はこれで、勘弁してやる。お前の休みはしあさってだったな。明後日の夜は覚悟しておけよ。……不足しているものはちゃんと補充しなきゃな。お互いに」
「あ……」
郁はそこで、やっと気が付く。
そういえばここ最近ずっと……。
慣れない教官職で疲れている郁に気を使ってくれていたのだろう。
 
「篤さん、ごめん。……篤さんもあたしの事、足りてなかった?」
「ああ。全然足りない」
堂上は郁を優しく抱き締めた。
 
「ごめんね、篤さん、あたし、教官の事でいっぱいいっぱいで……」
堂上が郁の為に我慢してくれている、その事に思い至る余裕もなかった。
郁は堂上に対して申し訳ない気持ちで一杯になる。
「謝らんでいい。わかってるから」
 
堂上は笑いながらは言うと、郁に優しい、触れるだけのキスをした。
「さあ、今日はもう寝ろ」
「うん、おやすみ」
郁は嬉しそうに笑った。
 
堂上は郁が寝息を立てるまで、優しく頭を撫で続けた。
郁の幸せそうな寝顔を見つめ、堂上はそっと郁の額に唇を落とした。
 
 
 
  1. 2011/07/05(火) 07:00:00|
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コメント

はじめまして!

初めまして!初めてコメントいたしますjonikoと申します(*^^*)
いつも読み逃げさせて頂いてました。すみません。

今回のSSを読んで、私まで幸せな気分が満ち足りてきちゃいました~。
堂上さんだったら、うんうん、そうするよな~と独り言いいそうでした。
いつも暖かい気持ちになれるものをありがとうございます(^-^)/
これからも楽しみにしてます!
  1. 2011/07/07(木) 22:56:42 |
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  3. Joniko #-
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